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村のルールに違反し治安を乱す

男は顔をしかめる。ガムランの調べにのり奇声をあげながらの戦いは、男たちの勇気を称える儀式だが、見ていて残酷な印象はない。「喧嘩ごっこ」ということもあるだろうが、メイン・イヴェントの前には、子ども同士、老人同士の戦いもある。気分としては、むしろ和気あいあいである。このように、村でのくらしは、押し並べていえば、のどかであり、親切で善良な人が多いような感じをうける。しかし、良からぬことを企む輩がいないではない。やはり人間社会なのである。そんな時は、誰でもが「警察官」としての役目を果たすことになる。具体的にはお互いに日常の行動をチェックしあうという「相互監視制度」といったシステムがこの村にはある。昔から村のルールに違反し治安を乱すような者がいればことと次第によっては誰もが「犯罪者」を逮捕し、世話役や古老に引き渡すという責任を持たされているのである。余談になるが、快適なくらしを守るために、互いの行動をチェックし合うという相互監視制度は、昔から多くの国で考えられてきた。民主警察の基礎を作ったイギリスでも、アングロサクソン人の時代から、皆を泥棒でつかまえようという「ヒュー・アンド・クライ」のしきたりや精神があった。日本語に訳せば、「叫喚追跡」となるこの言葉の意味は、賊を追う時は「泥棒だ、つかまえろ!」と大声でまわりに急を知らせ、これを聞いた人は何を差しおいても同じように叫び声をあげ、笛を吹き犯人を追いかけなくてはならなかった。